産業革命の折に発見された、従来の蒸気機関から一歩進んだ先進技術。
蒸気がある一定の超高圧で保たれている場合、これを真空状態にする魔術をかけると、内部の蒸気が負の質量を持つようになる。
これを外側から観測すると、超高圧蒸気を収めた巨大な球が浮かび上がるように見える。
この負の質量を持った蒸気を「浮蒸気」と呼ぶ。
浮蒸気を金属製の超高耐圧球体に収めたものは、「浮蒸気球」と呼ばれ、蒸気空挺の浮動力原として活用されている。
並列して魔力伝導体で繋ぎ、魔術的措置を加えると、ある程度その内部質量を操作できる。
これによって、蒸気空挺は高度を上げたり下げたりできるのである。
ただし、ある一定以上に質量を上げる(高度を下げる)、あるいは内部の蒸気の質量を正に戻すと、浮蒸気球の外殻金属球に大きな負荷がかかり、最悪罅が入って爆発する可能性があるので、浮蒸気球は内部の蒸気が負の質量を持ち浮蒸気となった瞬間から、基本的には地面に接触できなくなる。
なので、浮蒸気球は基本的に鎖や碇で繋がれた状態で利用されている。
より大きな蒸気空挺ほど、より多くの浮蒸気球が取り付けられており、機関部を見学すれば真鍮色の球体がところせましと繋がれている荘厳な風景が見られる。